酒は燗、肴は刺身、酌は髱

我が身の色をお隠しでないよ、着の身着のまま、ええじゃないかえ

メカじゃなくて歌を信じるロボアニメの話

マクロス7という最高のアニメがある。

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変形するメカやらドッグファイトやら板野サーカスとかいってミサイルがぶわーっとなる演出が印象的なマクロスシリーズにおいて、異色の一作。

とにかく、歌には力がある!を貫く。

細かいことはあんまり気にしてない笑

 

マクロスシリーズなので大前提として人類は地球外惑星への移住を目指し、移民船団で宇宙の旅を続けている。

もうシリーズ第1作で戦ってた巨人種族のゼントラーディとはうまくやっているんだけど、新しくプロトデビルンとかいう謎の敵が出てくる。

どうやら宇宙中の生命体の生気を吸い取って集めているらしく、それがマクロス船団を狙ってきた。

プロトデビルンは死ぬほど強いけど数が少ないので中盤くらいまでは洗脳した人間をメカに乗せて襲ってくる。

皆殺しにすると生気も集まらないので、毎回そこそこの被害で勘弁してくれる。

 

そこで、主人公でロック歌手の熱気バサラは敵が来るとヴァルキリーに乗って出撃して、神回避を続けながらひたすらギターを弾いて戦場で歌いまくるっていう。

曰く、「俺の歌を聴け!!」

全然攻撃しないし、とにかく飛び回って歌ってるだけなので何したいんだあいつということで周りはひたすら困惑。

ていうか操縦桿がギターの形してるけどバサラのメカ一体どうなってるんだ。

挙げ句の果てに、襲ってきた敵機にミサイルで応戦しようとするバンド仲間のミレーヌに言う。

「ミサイルなんてくだらねえぜ、歌うんだ」

 それ言っちゃうんだ。

いやいやマクロスからミサイル取ったら何が残るんだったっけ。

もういいよ最高か。

 

話は面白いし突っ込みどころも多いし各所に遊び心たっぷりだし歌もしっかりしててかっこいいしもう全体的によく出来てるし、普通にめちゃめちゃ良作なんだけど、その中でもギギルという敵が激アツなのです。

マクロス7は個人的に、ジブリを除いたアニメ作品中ベスト5には入るんだけど、私はギギルを見るためにマクロス7を見ると言っても過言ではない。

 

ギギルはマクロス7を通じて人類を襲撃するプロトデビルンという敵の一人で、一見汚ったない粗野な直情おじさんなんだけど、同族のシビルという女の子のことを本当に本当に大切に思っていて、とにかくとにかくずーっと命懸けで守ろうとする。

シビル以外のことは本当にどうでも良さそう。まず確実にみんな死ねと思っている。

しかしシビルは人類だけならず仲間からも狙われていて全然思うように守れないので、よく

「シィビルゥゥウウウウウウウウウウウウ!」

とか

「ウォぁぁぁあああああああああああああ!」

 とか叫んでいる。

大体運命に悪態ついてるか、部下にキレてるか、叫んでいる。

ちなみにこんな顔。

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めちゃめちゃ悪そう。

 

こんなギギルなんだけど、 

34話~38話が、まじで神回です!!

 

34話「ギギルが歌った日」

このギギルが歌うんだよ。

 

ギギルは頼まれもしないのにひたすらシビルのために動いているんだけど、エネルギー不足で眠って起きなくなっちゃったシビルのために、バサラが自主的に毎晩歌いにくるっていうのが続く流れがあって、ギギルは隠れてそれをずっと見てるの。

バサラの歌には不思議な力があることになっていて、まあ要はバサラの歌を聴くと生きる力が湧いてくるという話なんだけど、彼の歌でしかシビルが起きそうにないことにギギルさん悔しくって悔しかって歯ぎしりしながら、でもどうしようもないからずっと隠れて見てる。

ギギル自身は歌のことなんてなーんとも思ってなくて、単に主人公バサラの歌はシビルが元気になるエネルギー源になるから利用しているだけという、ある意味歌と一番遠い存在だったギギルが、34話で仲間に攻撃されて死にそうになった時、バサラの歌を歌いだす。

その辺からギギルの内面に変化があって、彼自身変化していく自分に戸惑いながらも、そして変わらずシビルのためにひたすら体を張り続けながら、毎話歌うシーンが描かれる。

 

そして、38話!

またもボロボロ。

仲間のプロトデビルンに殺されかけた時、

 

「シビルのためなら、俺はどうなってもいいんだ」

「俺はギギルだ!俺の歌を聴け!!」

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今まで戸惑いがあった「歌う自分」を受け入れ肯定するという、内面の大きな大きな転換!

 

しかし、

 

しかしその直後、

 

ギギルがついに死んじゃう(´;Д;`)

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そしてお決まりの奥の手、最後の変身。

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最後の力を全部使って、シビルにあだなす奴らと星をひとつ巻き込んで死ぬんだけど、そのとうとう全てを使い切って体が崩れてゆく時に口ずさむ歌がもう本当に最高で、その無骨な優しさといったらちょっと文章にならない。

 
「シビル、俺の、全て…」

「♪お前が  風になるなら

   ♪果てしない  空になりたい…」

 

まさに彼の生き方そのものって感じで、もうグッと来ずにはいられない。

あまりに美しくあまりに格好いい男だ。

 

読者諸兄にも、ぜひギギルを観て欲しい。

長いけどその価値はあると確信している。

いつも心に歌を!

【外飲み】上野パンダ橋~パック鬼殺しミニやいかに~【ワンコイン】

こんばんは。

ぽん氏と協議の結果、外飲み企画を始める運びとなりました。

とりあえず都内の外で飲める量スポットを開拓するべし。

ついでに、できればセンベロと言わずワンコインで飲めるといいよねということで、ワンコイン飲みを心がけてまいります。

しかし、あくまでもスタイリッシュに!

一張羅に身を包み、500円玉一枚を握りしめて我々は家を出るのだ!☆〜(ゝ。∂)

 

第一弾は言わずと知れた上野パンダ橋!

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改札すぐ前、テーブル付きの空中回廊が続いています。

改札すぐに、品揃えも明らかに外飲みに寄せたニューデイズがあるので買い出しも楽ちん♫

 空は広い、上野のど真ん中の割には静か、同志も多し、しかし広いので干渉もなし、見咎めそうな人はほとんど通らない!

本当に、外飲み入門にはうってつけといえるでしょう。

とっても快適です。

 

本日のラインナップ。

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締めて402円也。

パック鬼殺しミニ、ニューデイズの粋な計らいでほぼ氷点下までキンキンに冷えたアサヒ缶ビール、ベビースターラーメン

 今回のチャレンジは何と言ってもパック鬼殺しミニ。

一合で100円…ちょっと不安になりますが、こいつを味方につければワンコイン飲みの幅も大きく広がるというもの。これを試さない手はない。

 

【結果】

上野パンダ橋は最高。

ビールとベビースターも言うことなし。

鬼殺しはかなりギリギリ……。

 

いや、鬼殺しミニ先生の冗談みたいなコスパを鑑みれば全然悪くないんだけど、ちょっと味がね…薄めたビールを出す店の「日本酒」の味がします。

ワンコイン飲みは制約上、酔いに任せて勢いをつけるのが難しいので、一度味が気になるとどうしても気になる(これをワンコインのクビキと言います)。

そして、鬼殺しミニは、控えめに言ってもかなり気になるお味。

また、パックからストローで飲むのもちょっと慣れない。これに関してはちょっと慣れたらいけないような気もする。

あくまでもスタイリッシュに屋外で飲む、これが我々の史上命題なのだ。

 

※※※※※※※※※※※

 

今回、ワンコイン飲み前提のパック鬼殺しに関しては味とパックであることに関して課題を残したと言える。

前提の変更か革新的なアイディアが待たれるところです。あるいはアウフヘーベン

 

乞うご期待!☆

elmo-ponanza

ゴールデンウィークは世界コンピュータ将棋選手権の季節。今年で27回を数える。

主要大会4連覇中の絶対王者ponanzaが、新たにディープラーニング技術を将棋プログラムとしてはじめて実用化したponanza chainerは、下馬評では圧倒的な優勝候補筆頭だった。しかし、そのponanzaを抑えて優勝したのはelmoという新興ソフト。開発者の大瀧さんの優勝後インタビューによると、大会前にponanza開発者の山本さんに「elmoがponanzaに勝つ可能性は5%」と言われたらしい。そのくらい、前評判ではelmoが優勝すると思っていた人なんて誰もいなかったということ。実際はelmoの2戦2勝だったので少なくとも5%ということは無いだろう(山本さんはインタビューの壇上に上げられてその件について謝らされていた笑)。また、大会直前にコンピュータ将棋のインターネット対局サイトfloodgateに、monkeymagicという名前の正体不明のアカウントがあらわれ、トップクラスのレーティングを記録したことが一部のコンピュータ将棋ウォッチャーの間では話題となっていたが、その正体がelmoであったことも大会中に明かされた。

 

前置きはこのくらいにして、ponanza対elmo、決勝リーグ総当たりの最終戦全勝対決、当然ながら勝った方が優勝という一局。この将棋を幸運にもリアルタイムで観ることができた。久しぶりに将棋でここまで感動したので、すこしメモを。(自称)初段くらいの私の書く解説なんてなんの価値もないことは明らかだけれど、そもそも地球上にelmoとponanzaより将棋が強い存在はどこにもいないので、なら誰が書いても一緒と開き直ってみる。(elmoはフリーソフトなので彼自身に聞いてみることは出来るのだけど)

 

先手elmo後手ponanza。戦型は角換わり相腰掛け銀。後手が61金を置いたまま駒組みしており、前の記事で載せた藤井羽生戦のような先手45桂ポンの早仕掛けを最大限に警戒している。コンピュータが45桂を非常に有力と評価していることがわかる。1図47銀と金銀の連結が離れ先手が仕掛けづらくなったのを見てからようやく62金と右金の形を決める。

 

1図

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 すこし進んで2図。先手陣の78玉58金左型が奇異にうつるが(69飛を含みにした?)、それ以外は先後ともにプロ棋界でも最新流行形といってもいい形。後手から85桂と仕掛けた局面。個人的には、先手が19飛車と回った瞬間に85桂の仕掛けはタイミングが良いように感じる。先手の16歩という攻めは手数がかかるし、かといって45歩とも突きづらいので(同歩同桂は飛車を素抜かれる)、先手としては攻め合いを目指しにくいタイミングだからだ。しかも78玉型が7,8筋の攻めに対して当たりが強く、素人としてはこの局面は後手が指しやすくてもおかしくないように感じてしまう。

 

2図

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この後、先手は7筋の攻防を一旦収めて、1筋から反撃に出ることになる。私の目には、それしか手が無いから仕方なくといった類の攻めに見える。17飛と浮くことで角の当たりを避けてからさらに4筋を突くが、後手はその間に1筋で攻め合い目指す展開に。

 

3図

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3図は先手が1筋を凹んで受けたのを見て後手も4筋を受けた局面。盤面左右の小競り合いが一旦収まったここからの数手が、人智を超えているとはまさにこのこと、という凄まじい指し手であった。平仮名と漢字で書いてあるのに日本語と認識できない文字列のような空恐ろしさすら感じる。しかし、その後の展開を注視してみると、あくまで僕の解釈ではあるが、おぼろげながら信じがたいほど緻密なelmoの構想の片鱗が見えてくるような気がする。

 

3図からの指し手は

19角76歩同歩52金18飛12香75銀同角45桂同銀同銀97歩成同歩同角成同香同香成同桂17香

 

笑いが止まらなくなるような手順だが、私なりの解釈を述べるなら、「お互いが相手の攻めを誘っている」ということだ。

 

まず19角。確か、角換わり腰掛け銀の定跡形で先手が19に角を打つ展開がある。ただし、その19角は後手の64の歩と73の桂馬と82の飛車を狙って打つ遠見の攻めの角であり、elmoの19角とは全く違うだろう。elmoの19角は、少なくとも一部分は受けの手で、28角成を消して次に45桂と跳ねられるようにしたんだろう。elmoは恐らく「次にこちらから45桂がありますよ。先に攻めなくていいんですか?」と伺いを立てているのではないか。

ponanzaはそれを見て7筋の突き捨てを入れた後に52金と形を整える。52金以下18飛12香とお互いに先攻の権利を譲り合うような形を整えあう手待ちの応酬となる(12香に至っては純粋な一手パスか、微マイナスの価値の手だ)。

12香の後のelmoの手順は私的にはこの将棋で最も衝撃的な3手である。75銀同角45桂。一見すると手待ちの応酬にしびれを切らしたelmoが先に攻めかかったようにみえる。しかしよくみると、19角が効いていて後手の角の逃げ場が無くなっているのだ。銀を捨ててから桂馬を跳ねるという手順は思いもつかないが、これで後手の角は行く場所が無いため、ponanzaは桂馬を食いちぎったあと角を97に突っ込んで端を突破する。

そして香車を手にしたところで17香。この手の意味は難しくない。飛車を2段目からズラして受けの横効きが無くなった瞬間に猛攻を仕掛けようということだ。ただし、この香を打ったらもう後戻りはできない。局面はponanzaの攻めelmoの受けという構図が決定し、攻めが続けばponanzaの勝ち、攻めが途中で止まればelmoの勝ちという将棋になっている。

 

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ここで思い返してみてほしい。この盤面に誘導したのはどちらだったのか。ponanzaが攻めかかったのか?違う。elmoが75銀から45桂で駒を渡して攻め“させた”のではないか。巧妙に後手の角の退路を封じていた19角は3図の局面で打ったものだが、もしやあの図の時点で、この展開で先手良しを想定していたのだろうか。信じがたい話である。実際、一連の手順の中で後手は銀桂香を手にしているが、それだけ渡して攻めさせて、それでも受けられるという判断をelmoはしているのである。生放送を観ていた限りでは、この局面での評価値はelmoとponanzaともに自分が少し良いと判断していたようだ。elmoは受けが効くと思っていたが、ponanzaはこれだけ駒を貰えば攻めになると思っていた。こういう主張のぶつかりあいは勝負を観ていて一番興奮する時である。ましてや攻めているのは鬼のような攻め将棋で恐れられている絶対王者ponanzaなのだ。

しかし、結果的にはelmoが正しかったようだ。この後は、ponanzaの猛攻をelmoが2度の79香や89銀の打歩詰の凌ぎなどの妙手の連続で受け続け、78玉の顔面受けが決め手となり先手勝ちとなった。

 

5図 先手受けきり

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以上が私なりのこの将棋の解釈である。

 

将棋ソフトが1年で前の年のバージョンに95%勝つペースで強くなり続けている今、この対局は将棋というゲームが生まれて以来最もレベルの高いもののひとつだろう。今みておいて損は無いように思う。