酒は燗、肴は刺身、酌は髱

我が身の色をお隠しでないよ、着の身着のまま、ええじゃないかえ

時代はweb漫画

漫画が面白いことは古来より有名かと思いますが、グローバルでユビキタスでインターネットな今、もはや時代はweb漫画なのはご存知でしょうか。

といっても、いっぱい話数があると大変だし、単行本が出てたりすると全話公開してなかったりするので、比較的連載が始まったばかりですぐ最新話に追いつけるすごいweb漫画を特別に教えるから読んでほしい。

 

 

・銀河の死なない子供たちへ / 施川ユウキ

銀河の死なない子供たちへ 無料漫画詳細 - 無料コミック ComicWalker

 

現在6話まで。

アニメ化した『バーナード嬢曰く。』、歴史上最鬱のグルメ漫画『鬱ごはん』、そして2016年を代表する大傑作『ヨルとネル』などなどの施川ユウキ先生のたぶん初web連載。

こんな漫画読んだことない。何処へ向かうのか全然わからない。人類が絶滅した後の地球(らしき星)に、不死身の姉弟とその母がいてフリースタイルラップしたりライオンに食べられたりするという漫画。今日公開の6話でまたすごい新展開ですごい。読んで。

 

 

・平太郎に怖いものはない / スケラッコ

トーチweb 平太郎に怖いものはない

 

現在7話まで。

2016年を代表する大傑作(2連続2度目)『盆の国』で鮮烈なデビューを飾ったスケラッコ先生の新連載のお好み焼き屋さん妖怪漫画。とにかく僕はこの人の絵が大好き。高野文子先生はすごすぎて高野文子先生みたいな絵だねとか安易に言いたくないし実際目指している場所は微妙に違うとは思うけどでもあえて挙げるなら、高野文子的な?(言う) あと絵が動く。すごい。読んで。

 

 

・劇画狼のエクストリームマンガ学園

劇画狼のエクストリームマンガ学園 – LEED Cafe

 

エクストリーム漫画読みである劇画狼氏がエクストリーム漫画を紹介する企画。基本読み切りなので楽。以下リンク先の作品紹介から引用。

MANGAは日本が世界に誇る文化だと言われて久しい昨今。しかし、描かれた全ての作品が書店に並び続けているわけではなく、絶版本や単行本未収録のままの名作短編などというものが、この世には山ほど存在する。漫画始末人・劇画狼が、そういった「今、改めて世に問うべき作品」を、時代・ジャンル・出版社の壁さえ越えてサルベージ! エクストリーム(極端・極限)な魅力を持った作品たちの饗宴を、その目に焼き付けろ!!

というやつです。で、実際この企画から『サイコ工場』という伝説的なホラー漫画(らしい。僕は不勉強ながらはじめて知りましたが)の復刊が決まって今度出る。なんかすごく意義のある企画になってきている。すごい。ジャンルはホラー漫画が多め。なんとなくタイトル眺めて面白そうだなと思ったやつをどれか1つでいいので読んでみてほしい。

 

 

えー、以上です。特別に教えるみたいなこと言っといて、3つだけです。ごめん。全然漫画を読んでないことが完全にバレた。むしろみんな僕に面白いweb漫画を教えてほしい。お願いします。

 

 

【追記】2017.7.23

・サザンと彗星の少女 / 赤瀬由里子

トーチweb サザンと彗星の少女

 

現在24話。

さっき上げたばっかの記事だけど追記します。なぜなら今読んだから。

これいま物語は佳境で、人気もありそうなので完結したら多分単行本が出ます。しかもフルカラーの漫画なのでいいお値段になるんじゃないか。でも今なら全話公開してる。すごい。読むしかない。24話と言っても1話の長さは短めでテンポも良いのでさらっと読めます。現に僕が今一気読みした。

お話は、宇宙で『ふしぎな海のナディア』的な、面白くないわけがないやつ。絵めちゃくちゃ上手いし、カラーの塗りが綺麗。

ペルソナ5

ペルソナ5をクリアしました……

はぁ〜、やっぱり結構たのしかったなというか、じゃなきゃ92時間もプレイしないんだけど。何回もゲームオーバーしてるのでそれ入れれば100時間超えてるだろうし。

自分のお気に入りのゲームを人にプレイさせるのが好きな友人の家ではじめて、友人宅に通いながら35時間くらいプレイしたあたりでPS3ごと借りてきて、合計9ヶ月くらいかかってクリアした。

 

やっぱりこのゲームの素晴らしいところは、UIのデザインとかそういう細部で、とにかくプレイヤーのストレスが無いように設計されている。かなり複雑なシステムのゲームなのだけど、わかりやすく、操作しやすく、タイムラグも無いようになっている。

脚本も相当練ったんだろうなという感じはある。2016年にペルソナシリーズでこのテーマをやるぜ!みたいな気概はビンビン感じるし、実際その価値のある作品だったと思う。ただいかんせん陽性すぎてスレたおじさんにはカロリー高くてもたれるなという感もなくはない。個人的には10〜11月あたりの流れがすごく好き。

ゲームの難易度はノーマルにしたら、最初の方は気を抜くとすぐ死んじゃう感じだったけど、進むにつれて簡単になっていって終盤は戦闘で負けるビジョンがみえなかった。戦闘のシステムなどは良いと思った。これだけ長いRPGで最後まで戦闘が退屈にならなかったので大したものだと思う。

 

しかしなんといってもこのゲームはキャラゲーなのだ。どのキャラクターもそれぞれ魅力があって良い。日常パートではほとんどキャラクターとの会話を進めていくことになるので、そこに魅力があるのは本当に良い。というかこれ本質的にはギャルゲーなんだよね。女性キャラクターとは関係を深めていくと付き合えるようになるし。

そこが大問題で、普通のギャルゲーってあるキャラクターのルートに入ったらその1人の話が進んでいくということになると思うんだけど、ペルソナはすべてのキャラクターのルートを時間リソースを消費することで自分のペースで独立して進められるので、しかもキャラクターがストーリーの進行ごとに順々に1人ずつ出てくるので……

何が言いたいかというと、あ、この人かわいいな→付き合う→ストーリーを進めると別の女子登場→かわいいな→付き合う を繰り返して最終的に四股かけたら、終盤やや地獄だったんですよ…… なんか、最終的には、画面に映ってる女子が基本全員彼女みたいな状況になって、不必要にメンタルが削られていって。葛藤が無かったわけではないんだけど、ゲームだから!って割り切ってたらこんなことになってしまった。でも、やっぱりそのまま何事も無いはずもなく。

f:id:tamakobkrunion:20170718231911j:image

こちらは修羅場の画像ですけど、もうこの辺になると逆に笑えてきて、これはペルソナじゃなくて『うる星やつら』なんだと思い込むことによってやり過ごしていた。『うる星やつら』なので、画像の後の言い訳の選択肢で、「でもチョコは欲しい」みたいなネタ択を選びボコボコにされた。

うる星やつら』だと思い込むというライフハックはかなり有効だったので、2周目やるなら主人公の名前を諸星あたるにすると思う。それかおとなしく彼女を1人だけにするか……(それがいい)

 

次は、いっしょに借りてきた『キャサリン』をやります。『スプラトゥーン2』は0次予選落ちなので……(switchが買えない)

個人的なハーモニー (アニメーションはおもしろい)

昨年、『レッドタートル ある島の物語』や『ソング・オブ・ザ・シー』といった素晴らしい長編新作アニメーションや、ユーリ・ノルシュテイン作品の修復版の劇場公開などを観て、アニメーションに興味を持った。

 

それでちょうど昨年末に出版されていたこの本を読んだ。

個人的なハーモニー ノルシュテインと現代アニメーション論 | 動く出版社 フィルムアート社

本の内容は、ノルシュテインの『話の話』がアニメーション史に燦然と輝く大傑作とされながら、あまりに謎めいているその内容が観客や研究者の理解や解釈を拒み続けているという事実を足がかりに、『話の話』を様々な文脈から読み解こうとする先行研究から視点を変え、『話の話』が謎めいているのは、ノルシュテインの「個人的な」作品だからであり、そのような作家にとっての「個人的な」世界を創出しうることこそが、アニメーションの持つ最も重要な特質なのではないかと仮説を立て、「個人的な」アニメーションがどのように生まれ、観客の認知や現実の世界とどのように響き合うのか(本書ではその共鳴を「個人的なハーモニー」と呼ぶ)を、様々な作家による具体的な作品の例を逐一出しながら紐解いていくというものである。詳しい内容はぜひ読んでいただきたい。

最近僕はこの本に出てくるアニメーションのタイトルをいちいちYouTubeでチェックしながら読み、かつ日本を代表するアニメーション作家である山村浩二氏のブログで紹介されているアニメーション作家をちょっとずつ観ていった結果、30〜40本くらいのアニメーションを観たことになったので、どビギナーではあるけれど面白かったやつを書いておきたい。

 

山村浩二氏のブログ

知られざるアニメーション

 

 

技 / ジョルジュ・シュヴィツゲベル

Jeu - Georges Schwizgebel - 2006 - YouTube

 

アニメーションに興味を持ったきっかけのひとつだったりする。ツイッターでたまたまタイトルをみかけて、調べて観てみたらすげえなと。

 シュヴィツゲベルはほかにも何作か観たけど、僕が思うにこの人の作品の魅力は、その偽物っぽさじゃないか。ドローイングアニメーションとしてはかなり無理な動かし方をするのだけど、その結果故意か故意じゃないかは知らないが、完全に滑らかな動きではなく、どこかぎこちない動きになっている。塗りもそうで、特に人物の塗りなどはコマごとにムラがある。山村浩史氏のブログによれば、

通常のセルアニメーションと違い、輪郭や黒いベタはセルの裏から塗って、色は表からペインティンしてく作風。

とのこと(それがどう影響するのかはよくわかりません)。そのブレみたいなものが、現実にみたいに見えるけど確実に現実と違うズレたどこかに作品を位置付けている気がする。不気味の谷っていう話があるけど、この人のアニメーションには、それに近い現実からのズレかたがあるように思う。作品集欲しいんだけど、出たのがもう10年以上前で近作が入ってないのがなあ。また出してほしい。

 

 

氷山を見た少年 / ポール・ドリエセン

Paul Driessen - The Boy Who Saw the Iceberg - YouTube

 

画面を二分割して、片方に現実を、片方に少年の妄想を描くというアイデアが面白いし、その妄想というか夢があらわれては消えてゆく儚さ。

 

 

タンゴ / ズビグニュー・リプチンスキー

Tango by Zbigniew Rybczyński (1980) - YouTube

 

これも最初の方に観て、アニメーションってこんなことしていいのかと思った。ミニマルミュージックみたいな構成なんだけど、アニメーションでやるとまた違う感覚がある。つまり、ある部屋という限定的な空間における、あらゆる時間が同時に存在しまた消えてゆくというような。あの男の子が大きくなった姿がこの男性なのではないか?のような想像力を働かせていくと、一つの部屋の中に無限の宇宙が開ける。

 

 

手 / イジー・トルンカ

Ruka | The Hand |Jiri Trnka | Research (1965). - YouTube

 

こんなに怖い作品は無いと思う。この作品がトルンカの遺作となったということまで知ると、どんな想いでこれを作ったのかなどと考えずにはいられない。

 

 

草上の昼食 / プリート・パルン

Eine murul (Breakfast on the Grass, 1987) - YouTube

 

マネの絵画をモチーフにした群像劇。群像劇といっても、4つのエピソードの関連性は謎めいていて、ストーリー上での繋がりというよりも、現実の4つの異なる切り取りかたというような印象がある。ちょっとつげ義春っぽい世界観に、またちょっと異物感のある音楽のセンスも良いし、そのぐちゃぐちゃが完全な一瞬へ収斂していく様は素晴らしい。ていねいに笑えるオチまでつけてくれる。

 

 

ストリート・オブ・クロコダイル / クエイ兄弟

1987 BRUNO SCHULZ'S STREET OF CROCODILES ULICA KROKODYLI by Quay Brothers - YouTube

 

人形アニメーションなんだけど、クエイ兄弟はもう単純にモンタージュとかカメラの動かしかたがめちゃくちゃ上手くてすごい。そして、基本的には映画的なテンポの中にふと挿入される機械的なカットとかカメラの動きとかがまた面白い。案の定長編映画も撮っているらしい。

そして!なんと!今なら!渋谷のイメージフォーラムで!クエイ兄弟特集をやってるんですねえ。僕も何回か行こうと思ってる。

 

 

 

ざっと列挙してみたけど、アニメーションを色々観ていく面白さというのはやはり、それぞれの作家がまっっったく違うことをしているという点にある。作品ごとに異なる独立した世界を覗き見、独立した秩序を体感する楽しさというか。他のどの分野にもこれだけ幅の広いジャンルはなかなか無いと思う。