酒は燗、肴は刺身、酌は髱

我が身の色をお隠しでないよ、着の身着のまま、ええじゃないかえ

酒は燗、魚は刺身、酌は髱

というタイトルをこのブログに付けたわけです。落語とかに出てくる古い言い回しで、それまで特別意識していたわけではないが、多分僕はこの言葉が気に入っている。

 

酒は燗、魚は刺身 までは普通。もちろん僕は冷酒も肉も好きだが、昔のことだからお燗のお酒は今より手間がかかっただろうし、新鮮な刺身も貴重だっただろう。『らくだ』のサゲで、「冷でもいいからもう一杯」っていうくらいだもの。

 

 じゃあ酌は髱ってなんだよというところに省略があるわけ。この慣用句に限らず、髱で若い女という意味を持っているのだけど、この、一部分だけを見て全体と等価であるかのように言い切る省略は、そのままこの慣用句そのものの態度でもある。肴は刺身じゃなくてもいいのに刺身って言い切ってるっていう。

 

この省略は大胆なんだけれど、この場合は五-七-五という形式とともにあるので成功しているんじゃないか。ようはこの形式と省略の共生関係の美しさみたいなことを言いたい。

たとえば新世紀エヴァンゲリヲン碇シンジ君の周りのちいさな人間関係がそのまま世界全体の見立てとなっていくような省略の大胆さ。その人間関係のひとつひとつのパーツはそれまでのアニメに存在していたものの形式的な引用であり、それ自体が後にセカイ系という形式になっていくような。

または傷物語鉄血篇はライトノベルでありフィルムノアールであるという語りの形式化による省略、そしてその形式に記号が先行するかのような省略の凄まじさみたいな。

 

 

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アニメは最高!