酒は燗、肴は刺身、酌は髱

我が身の色をお隠しでないよ、着の身着のまま、ええじゃないかえ

FUJI ROCK FESTIVAL 2017

フジロックに行った。はじめて行った。

行ったのは土曜日。ラインナップがあまりにも良くて。金曜と日曜のラインナップにはそこまで魅力を感じないのに土曜はやべえなと思ったので、おそらく僕みたいな音楽の趣向の人が一定数いてピンポイントでターゲッティングされていると思う。そこまでされたら行くしかねえよな。帰ってきたので感想や反省など書いていく。

 

交通手段は新幹線+シャトルバス、土曜の朝行って日曜始発で帰ってくる(そしてその足でバイトへ)という強行スケジュール。ただ、車があれば車の方がいいとは思った。越後湯沢駅からのシャトルバスが普通に40分くらいかかるし、行きはラッシュなのか1時間くらいかかったし、そしてバスに乗るにもとにかく2,30分並ぶことになるので。当たり前のこと言うけど、フジロックは異常に人が密集しているので、何をするにも並ばなければならないということがわかった。それをいかに回避するかがポイントになる。

あと、電車を選んだ理由の一つは、酒を飲みたいからなんだけど、結果的には飲酒しているヒマなど絶無で一滴も飲まなかった。まあ楽しみ方にもよると思うけど。僕は貧乏性?なので、出来るだけ多くのライブを観たいというタイプ。適当にライブ観たり休憩したり酒飲んだりで楽しくやろうみたいな気持ちには全然ならない。そして、大問題なのはトイレで、トイレに行くだけで2,30分並ぶことになる。トイレに行ったために目当てのライブを見逃したなんてことになっては目も当てられない。そのため、トイレに行く回数を最小限に抑えつつ、トイレのタイミングをコントロールするために、いつどのくらいの量の水分を摂るかということまで意識して動いていた。なので飲酒などもってのほかということになってしまった。酒を買うにも並ぶしね。

 

そんなこんなで会場に着いたのは11時過ぎ。最初に見たのは

 

・the fin.

 素晴らしかった。フジの予習するまでは全く知らなかったバンドだが完全にファンになった。シューゲイザーぽい音なんだけど、構成も編成もかなりソリッドで、その中で拍節間の変化が面白く聴こえてくる。

 

その後ホワイトに移動して

 

・PUNPEE

とにかく、演者がフジロックのステージを全力で楽しんでいる感じが伝わってきて、観ていてこちらも楽しくなった。お嫁においでよスタートからのベック、レッチリ、オアシスの90年代オルタナの音源勝手に使ってロックセット(怒られようって言ってた)、PSG集結からのフリースタイルなどなど。あとまあトラックメイカーとしてのセンスが尋常じゃないことは再確認した。

 

その後苗場食堂で腹に油そばとカレーを腹に入れてから、グリーンの目当てのステージまでレッドで休憩。

 

・never young beach

休憩中にレッドで頭20分とリハーサルだけ観た。なんとなく名前は聞いたことあるけど、予定になかったので完全にノーマークだったが、いいバンドだと思った。世界基準のインディーロックのトラックに、ちょっと山下達郎大瀧詠一?みたいなねっとりとした日本風のボーカルが乗ってるバランス感がすごくいい。ちゃんと聴きます。途中で抜けてごめんなさい。

 

・Avalanches

本命のひとつだったAvalanches。開始の30分前くらいにグリーンに行ったら、前から4,5列目くらいに。雨のせいもあると思うけどかなり前に行けた。

Avalanchesは、神なので。『Since I Left You』は地上で一番好きなレコードのひとつだし。初めて聴いた瞬間のことも明確におぼえているけれど、でもその時にはもうAvalanchesは歴史の1ページ的な存在で、それからもそうだった。それが去年15,6年ぶり?にアルバムが出て、そして本当に日本に来たという。去年のフジロックのドタキャンもあったので、待っている間も何か実感が湧かない感じがあった。オーディエンスの雰囲気もそんな感じだった気がする。

それが本当に始まって『Because I'm Me』のイントロが流れてきて、生の歌が入って……というところでもう、よくわからない涙がボロボロと。なんか、Avalanchesが本当に生でライブやってるという感慨がすごかった。

登場時のSEがGuns N' Rosesの『Welcome to the Jungle』。苗場の山にかけたギャグだったと思う。あと待ってる間に前にいたおっちゃんがせんべいくれた。ありがとうおっちゃん。

 

・Death Grips

Avalanches後すぐホワイトへ。ギリギリの時間で着いたらちょうどはじまった。

雨のホワイトで少し離れた位置から観た彼らは神々しくさえあり、なんというか、この世に神がいるとすればこれのことかなと思うくらい、ありえない強さ。これより強い音楽がこの世に存在するとは思えない。上裸で刺青ビッシリの黒人男性が叫ぶようにラップし、後ろではDJの兄ちゃんがありえんくらい良い姿勢で内臓が震えるような爆重低音を響かせている。その隣ではドラマーが汗だくで力の限り乱打している。やばい。

 

小沢健二 1

そのままホワイトに残って小沢待機。トイレに行った10分くらいでもうかなり埋まってしまい、30メートルくらいのところで。開演を待つまで隣に立ってたおばちゃんと談笑。開演直前に、前列にいるらしいそのおばちゃんの旦那と息子から「DJブースがある」という情報がもたらされる。前日にはスチャダラパーフジロックに出演しており、となれば当然ファンの話題はもっぱら、『今夜はブギーバック』を演るのかどうか。DJブースがあるということはブギーバック演るのかなあなんて思ってたら、開演一発目でやった。からのラブリー、からの僕らが旅に出る理由。

この後の深夜のステージでもそうだったけど、今回の小沢は、ファンから期待されている曲はチャッチャと済ませてしまい、その後でゆっくり自分のやりたいやつをやってるような気がする。あと、今回改めて強く感じたのは、彼は本質的に詩人であるということ。他のミュージシャンがステージ映像を写しているステージ上方のスクリーンに、歌詞を出しているのもそうだし、客にとにかく歌わせるのもそう。詩を分かち合うというのが彼の音楽の大きな目的なんだと思う。なのでこちらもそのつもりで、彼が歌ってほしそうなところは全力で歌い、歌詞を知らない新曲のときは詩を噛み締めるように聴いたつもり。未録音の新曲『飛行する君と僕のために』や9月にシングルが出る『フクロウの声が聞こえる』も聴けたし、素晴らしかった。

 

その後Aphex Twinへ移動の予定が、グリーンへの移動が大渋滞で4,50分かかるというハプニング。くるりが演ってたヘブンが入場規制で、小沢の客が全員グリーンへ抜けるしかなく、入れ替わりでホワイトに入ろうとするLCDの客と交差して大混雑。数万人単位の人が移動するには、あまりにも道が狭すぎる。フジロックは世界一クリーンなフェスを標榜しているらしいが、そんなことどうでもいいので木を切り倒しまくって道と橋を作ってほしい。

 

Aphex Twin

まあでもなんとか終演には間に合い、10〜15分程度眺めることができた。正直凄すぎて、Aphex観終わった直後は全てがどうでもよくなってしまった。アピチャッポンのフィーバールーム級とまでは言わないものの、あの場所あの時間に観たあのステージはもの凄いインパクトがあった。巨大なスクリーンを7,8枚使ってビデオと照明がバババババってなる……(説明諦め) あの中心で1人で全てをコントロールしているAphexおじさん、神々しかった。この世に神がいるなら……(2回目)  いつかまたフルで観たい。絶対に。あと、今回唯一買ったグッズはAphex TwinのTシャツです。

 

 その後、ピラミッドの小沢その2を目指す。ピラミッドは小さいステージなので、小沢1から抜けるのにも時間がものすごくかかってしまったし、Aphexで立ち止まっちゃったし、小沢ファンの執念は凄そうだし入場規制は確実にかかると思っていたのでダメもとで行ったが、意外と余裕で入れた。ステージから25メートルくらいのところで。

 

小沢健二 2

 深夜の小沢はアコースティックセット。小沢健二のアコースティック曲といえばファンが期待するのはまず『天使たちのシーン』が代表だと思うが、それも一曲目にさらっと演ってしまう。

彼曰く「去年くらいから美術館とかで演ってるセットリスト」とのことだが、4曲ごとくらいに計3回のモノローグが入る特殊な構成。モノローグの内容は、夏休みについて、労働について、世界の不思議さについてなどなどだが、ここで詳しく述べることはしない(よく憶えていないので)。しかし、その3回のモノローグの後には3回とも新しい曲をやっていて(神秘的、飛行する君と僕のために、流動体について)、関連づけて詩を聴くと小沢の思考が少し理解できた感じはあった。特に『神秘的』の歌詞は発売以来ずっと聴いていてもよくわからなかったのが、なんとなく身体に染み込んでくる感じがあった。

深夜の小さいハコでのアコースティックセットということで、ものすごく親密なステージになっていた。あの時間と空間を確かに小沢健二と共有できた、なんなら対話ができたんじゃないか、そんな気さえするような。ステージ的に歌詞の表示はないけれど、『ドアをノックするのは誰だ?』や『流動体について』で彼が「歌える??」ってこちらに問いかけてきたときに、ちゃんとすぐに歌で返せたのは嬉しかった。

 

 

この後は行くあてもなくさまよった後、収容所レベルで激混みの温泉に入り、始発直後のバスで駅へ、始発の新幹線で東京に帰ってきた。泊まるところのことを全く考えておらず、夜なんて適当になんとかすれば明けるでしょ的な感じで行ったが、まあまあしんどかったので、ちゃんと寝るところは用意したほうがいい。

 

 

そんなところですかね。心残りといえばタイムテーブルの都合で断念したコーネリアスですが、仕方なかったかな。帰ってきてからずっと小沢を聴いているし、いろんなステージを思い出しては早くあの場所に戻りたいと思っているので、来年も行くと思う。今回は友人と2人だったが、勝手がわかったから次は1人でも行けるしね。

 

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